従業員・経理の横領防止策は?手口や不正が起きる主な理由をわかりやすく解説
従業員や経理による横領が起きれば、企業にとって多大な損失が生じてしまいかねません。手口が巧妙であり横領に気づくのが遅れれば、企業の存続が危ぶまれる事態となる可能性もあります。
では、従業員や経理による横領を防止するには、どのような方法を講じれば良いのでしょうか?
今回は、横領が起きる主な原因や横領の手口、横領を予防する方法などについて、くわしく解説します。
従業員や経理による横領はなぜ起こる?
従業員や経理による横領は、なぜ起きてしまうのでしょうか?
主な原因は次のとおりです。
- 横領がしやすい環境であるから
- 横領が発覚しにくい環境であるから
- 従業員が横領を軽く考えているから
実際にはこれらの原因が複数絡み合うことで、横領が起きるケースが多いでしょう。
横領がしやすい環境であるから
企業で横領が起きる最大の理由は、横領がしやすい環境にあるためです。
たとえば、日ごろから現金の管理がずさんであり現金勘定が合っていないのが常態化していれば、従業員の魔が差してしまいかねません。また、現金の出し入れや預金の管理などを一人の従業員に任せていると横領が容易になりやすく、お金に困った従業員が誘惑に負けるリスクが高くなります。
横領が発覚しにくい環境であるから
横領が発覚しやすい環境であることも、横領が起きる大きな原因の一つです。
たとえば、経営者が1人の経理担当者を信用しきって通帳など現物のチェックを怠っていれば、仮に着服しても気付かれにくいでしょう。
横領が発覚しづらい環境にあれば横領がエスカレートする可能性もあり、非常に危険です。
従業員が横領を軽く考えているから
従業員が横領を軽く考えていることで、横領が起きる場合もあります。
たとえば、従業員がお金に困ったタイミングで「数日後に返すから、少しくらい無断で借りても良いだろう」「バレたらすぐに返せば良いだろう」などの軽い考えから、横領に及ぶケースなどです。
しかし、これが発覚せず「上手くいって」しまったことで徐々に感覚が麻痺していき、多額の横領を繰り返す可能性があります。
従業員や経理による主な横領の手口
従業員や経理が会社のお金を横領する手口にはどのようなものが考えられるのでしょうか?
主な手口は次のとおりです。
- 小口現金の抜き取り
- 預金の不正送金や不正引き出し
- 仕入れ先と共謀し、水増し請求をさせてキックバックを受領
小口現金の抜き取り
最も典型的な横領は、現金の抜き取りです。小口現金やレジスターから少額のお金を抜き取る行為などがこれに該当します。
この手口がまかり通っている場合には、そもそも現金勘定が合わないことが常態化していることが多く、現金過不足などの勘定で簡単に処理をしてしまっている場合もあるでしょう。
中には現金売上を除外するなど、脱税につながる行為を行っている場合もあります。
預金の不正送金や不正引き出し
預貯金の取り扱いを経理担当者などに任せている場合には、預金の不正送金や不正引き出しが行われる場合があります。
この場合には、そのまま経理処理をすると横領は簡単に発覚します。
そのため、横領を隠すために架空の経費を計上したり請求書を偽造したりするなど、巧妙な手口が取られることも少なくありません。預貯金口座からの横領は、現金の抜き取りと比較して被害額が大きくなる傾向にあります。
仕入れ先と共謀し、水増し請求をさせてキックバックを受領
横領は、仕入れ先の担当者などと共謀して行われる場合もあります。
典型的な例は、水増し請求とキックバックの支払いです。
たとえば、本来は500万円で購入できる仕入れについて、取引先の担当者と共謀して700万円の請求書を発行してもらいます。その見返りとして、会社ではなく従業員や経理担当者個人が、取引先から100万円など一定額のキックバックを受け取る手口です。
こちらも、横領額が多額に上る傾向にあるでしょう。
横領を防止するために企業が講じるべき防止策
横領は、企業の業績に悪影響を与えかねません。また、横領を隠すために粉飾決算がなされれば、企業の信頼にまで影響が及ぶ可能性があります。
では、横領を防止するにはどのような対策を講じれば良いのでしょうか?
主な対策は次のとおりです。
- コンプライアンス研修を徹底する
- 就業規則の懲戒規定を見直す
- ダブルチェック体制を整える
- 現金は速やかに入金するルールを構築する
- 小口現金を廃止する
- 入出金履歴を定期的に確認する
- 経理業務をブラックボックスとしない
- 経理業務をアウトソーシングする
コンプライアンス研修を徹底する
1つ目は、コンプライアンス研修を徹底することです。
横領の発生事例や、横領をした従業員のその後の処遇(刑事罰の対象となったケースや、損害賠償請求をされたケースなど)を紹介することで、横領の抑止力につながります。また、コンプライアンス研修を定期的に実施することで、会社が横領を許さないとの意思が伝わり、この点でも抑止力となるでしょう。
ただし、当然ながら横領などに手を染めず真面目に業務に励む従業員や経理担当者も多い中、あまりにも研修に力を入れてしまうと、疑われていると感じた従業員が業務への意欲を失ってしまいかねません。そのため、研修の開催頻度や研修内容については慎重に検討することが必要です。
就業規則の懲戒規定を見直す
従業員に対して解雇や減給などの制裁を科すためには、原則として就業規則や雇用契約書にその旨の規定をしておかなければなりません。そのため、横領をした場合の制裁について就業規則などに定めるよう、就業規則などを見直しておくことも一つの手です。
厳しい制裁を定めることで、横領の抑止力となる効果が期待できます。
ダブルチェック体制を整える
横領を防止するためには、できるだけ横領をしづらい環境を作ることが重要です。
そのための対策の一つとして、現金や預金を取り扱う業務について、ダブルチェック体制を整えることが挙げられます。
経理担当者が一人で預金を振り込んだり金庫から現金を取り出したりできない仕組みとすることで、横領の防止につながります。
現金は速やかに入金するルールを構築する
横領を防止するためには、従業員が現金に触れる機会をできるだけ減らすことがポイントです。そのため、現金売上のある業種であれば、レジスター内の現金をできるだけ速やかに銀行口座へ入金するルールを構築する必要があるでしょう。
また、現金過不足ができるだけ発生しないよう従業員教育を徹底したり、レジスター内の現金を銀行へ入金する作業を一人で行わないようルール化したりする対策も効果的です。
小口現金を廃止する
小口現金とは、日々の業務で発生する細かな支払いに使うため、金庫内などの常備しておく現金のことです。中小企業ではこの小口現金にまで管理が行き届かないことも多いため、現金化不足が発生しやすく横領の温床となる可能性があります。
そのため、可能であれば小口現金自体を廃止することも検討すると良いでしょう。
たとえば、支払いには原則として法人カードを使用したり、やむを得ず現金払いをする際には立替経費として給与と合わせて精算するルールにしたりすれば、小口現金の廃止が可能となります。
入出金履歴を定期的に確認する
経営者が自社の通帳や入出金履歴を定期的に確認することも横領の防止には効果的です。
経営者が自社のお金の流れを理解し注視しているとの姿勢を見せることが、横領の抑止力となるためです。
また、万が一横領が発生した際にも帳簿上の預金残高との差異や不審なお金の流れに気づきやすく、横領を早期に発見しやすくなります。
経理業務をブラックボックスとしない
経理業務を一人の担当者に任せてしまうと、経理業務がブラックボックス化しやすくなります。ブラックボックス化した状態は横領に手を染めやすい状態ともいえ、横領の発見が遅れて取り返しのつかない状態となってしまうかもしれません。
また、たとえ横領が起きなかったとしても、その経理担当者が急に退職や休職する必要が生じた際に、社内が大きな混乱に陥ってしまう可能性があります。そのため、経理はチーム制として、ブラックボックス化を避ける対策が必要でしょう。
経理業務をアウトソーシングする
ダブルチェック体制を整えたりブラックボックス化を避けたりする対策が横領の防止に有効とはいえ、人員や資金に余裕のない中小企業にとっては、ハードルが高く感じるかもしれません。
その場合には、経理業務のアウトソーシング(外注)がおすすめです。自社で経理機能を持たず業務をアウトソーシングすることで、横領を防止しやすくなります。
他にも、経理業務のアウトソーシングにはメリットが少なくありません。主なメリットは次で詳しく解説します。
経理業務のアウトソーシングするメリット
経理業務をアウトソーシングすることにはメリットが少なくありません。
主なメリットは、次のとおりです。
- 横領や不正を防止できる
- 従業員に役員給与などの情報を知られにくくなる
- 安定した経理機能を実現できる
- 業務の繁閑に対応しやすい
- コストが削減できる余地がある
横領や不正を防止できる
経理業務をアウトソーシングすることで、横領や不正を防止することが可能となります。なぜなら、自社の従業員が会社の帳簿や預金に触れる機会を最小限に抑えることが可能となるためです。
また、当社を含めアウトソーシング先の企業は高い倫理観を持って業務にあたっていることが一般的です。厳重なダブルチェック体制や承認体制を整えており、不正や横領などが起こり得ない仕組みを構築しています。
従業員に役員給与などの情報を知られにくくなる
特に中小企業オーナー様の中には、自社の従業員に自身の給与情報などを知られたくないとお考えの方は少なくありません。しかし、経理業務を自社で行っていると、給与情報を経理担当者に完全に秘匿することは困難でしょう。
経理業務をアウトソーシングすることで、自社の従業員に役員給与などを知らせる必要がなくなります。
安定した経理機能を実現できる
経理業務には、専門知識が必要です。しかし、高い専門性を持った経理担当者を自社で採用することに苦労している企業は少なくありません。
経理機能のアウトソーシングを活用すれば、自社で従業員を雇用することなく安定した高品質な経理を実現できます。
業務の繁閑に対応しやすい
経理業務は年間を通じて平準化されておらず、決算期など一定の時期に業務が集中することが少なくありません。経理担当者を自社で雇用している場合には、このような業務の繁閑にフレキシブルに対応することは困難でしょう。
一方、経理機能のアウトソーシングを利用すれば、業務の繁閑に対応しやすくなります。
コストが削減できる余地がある
経理機能のアウトソーシングには、何となく多額の費用がかかりそうだと考えている経営者様も少なくありません。
しかし、実際には経理担当者を自社で雇用するよりもリーズナブルな価格で利用できることが多いといえます。
当社TOKYO経理サポートが展開する「Smartおまかせ経理」では、ご依頼頂く業務量に応じた変動制の料金体系を取っていますが、従業員10名程度のモデルケースでは月額15万円程度でご利用頂くことが可能です。お見積もりは無料ですので、自社でアウトソーシングを利用した場合の費用を知りたい場合には、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
横領は、横領しやすい環境であるが故に起きてしまうケースが少なくありません。そのため、企業は横領を防止する対策を講じる必要があります。たとえば、ダブルチェック体制を徹底したり、コンプライアンス研修を徹底したりすることなどが挙げられます。
また、横領を防止するためには、経理業務のアウトソーシングも有力な選択肢となるでしょう。自社で経理機能を持たず従業員が預貯金を操作する機会を最小限に抑えることで、横領を防止することが可能となります。
経理機能のアウトソーシングには、他にもメリットが少なくありません。経理担当者を雇用するよりリーズナブルな価格で導入できる場合も多いため、一度検討してみてはいかがでしょうか?
当社TOKYO経理サポートは、中小企業オーナー様のサポートに強みを持つ「英和税理士法人」が母体となって運営しています。高品質な経理業務をリーズナブルな価格で提供しているため、経理機能のアウトソーシングをご検討の際には当社までお気軽にお問い合わせください。
導入に関するご相談やお見積もりは無料です。